心に残る名曲 その四十 「弦楽四重奏曲第ヘ長調 アメリカ」
1893年に作曲された弦楽四重奏曲です。ヴァイオリン二台、ヴィオラ、そしてチェロで演奏されます。この四重奏曲は、後期ロマン派におけるチェコ(Czech)の作曲家で国民楽派を代表する作曲家であるドヴォルザーク(Antonin Dvorak)がアメリカ滞在中に作曲した作品で、彼の室内楽作品中最も親しまれている作品の一つといわれます。ヴィオラの響きが特に心地良く伝わります。各楽章の特徴を記してみます。
第1楽章 Allegro ma non troppo
ヘ長調のソナタ形式です。ソナタ形式とは、二つの主題が交互に再現される楽曲の形式のことです。第1主題は五音音階によるどこか懐かしい雰囲気の旋律で、ヴィオラにより演奏されます。第2主題はイ長調で第1ヴァイオリンが演奏します。
第2楽章 Lento
ニ短調で三部形式の感動的な楽章となっています。Lentoとは、ゆるやかにゆっくりという形式のことです。ヴァイオリンが黒人霊歌風の歌を切々と歌い、チェロがこれを受け継ぎます。中間部はボヘミア(Bohemia)の民謡風の音楽となり、郷愁を誘うようです。
第3楽章 Molto vivace
ヘ長調のスケルツォ楽章です。スケルツォとは、イタリア語で「冗談」を意味し特定の形式や拍子テンポに束縛されないという特徴があります。中間部はヘ短調で、主部から派生した主題を用いて構成されています。
第4楽章 Vivace ma non troppo
ヘ長調のロンド。ロンドとは同じ旋律である旋律を何度も繰り返す形式のことです。主題は快活な性格の主題だが、第2副主題はこれとは対照的にコラール(Chorale)風なもので、美しく対比されています。
第3楽章の主題は、ドヴォルザークがチェコからの移民が多く住んでいたアイオワ州スピルヴィル(Spillville, Iowa)を訪ねたときに、森で聴いた鳥のさえずりを下敷きとしたとされています。Spillvilleの街のサイトへ行きますと、ドヴォルザーク一色の説明や写真がでています。